先日『世界なんて、まだ終わらないというのに』を読んだ。
これは吉田篤弘さんの『電球交換士の憂鬱』の改題であるらしい。
手に取ったときから、どこか懐かしい気配がしていた。
読み進めるうちに「この結末を僕は知っている」と感じ始め、案の定、かつて読んだことがあるのを思い出した。
おそらく八年ほど前のことだろう。
当時の記憶は、まるで電球がふっと切れるように途切れていた。
時の流れは思いのほか早く、気がつけば通い慣れた店もなくなっている。
けれど、この本を読み返すことで、忘れていた記憶が灯り直した。
懐かしい情景とともに──。
もちろん、思い出というものは往々にして美化されるから、必ずしも当てになるものではない。
それでも、心の中で消えていた電球は、電球交換士に取り替えてもらえたのだと思う。
そのことを、素直に喜んでおこう。
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